目次
はじめに
2021年2月時点で話題になっているclubhouseというものに招待して頂いた。気鋭のSNSということで各所で話題になっているけれど、音声チャットの派生版みたいな感じなので「じゃあその音声チャットの音声を拡張するのならどうすれば良いのかな?」と言う、素朴な疑問を考えて検証した記事。
条件
- clubhouseに招待されユーザー登録が済んでいる
- iPhone/iPadの内蔵マイクではなく、高品質なマイクを利用したい
- 自分の声と一緒にBGMも一緒に音声チャットに流したい
- 《重要》使う楽曲は著作上問題ない物を使うとする(自作の曲など)
要注意事項:許諾を得ていない著作音源の再生はダメ
clubhouseのコミュニティガイドライン にもしっかり明記されている
You may not engage in any conversations or upload any content that violates any intellectual property or other proprietary rights.
知的財産権またはその他の所有権を侵害する会話を行ったり、コンテンツをアップロードしたりすることはできません。
clubhouse – Community Guidelines : Rulesより引用
なので、clubhouseで他人の楽曲を使ったDJ配信をしたり、許諾を得ていない楽曲の再生等はしてはいけない。また、それらの著作物に対して「自分が作った」などの虚言も禁止事項となっている(当たり前のこと)。繰り返すが、clubhouseで利用することに許諾を得た楽曲、自分で作った楽曲などを再生し、clubhouseを楽しく利用することを前提とする。
事前調査
近年はiOS/AndroidなどのいわゆるスマホOSに対応(=USBクラス・コンプライアント対応)したオーディオインターフェースが登場しているので、それらを接続すれば解決すると思いきや、先人たち曰く「使うとトークルームが落ちる(切断される)」とのこと。
なぜそうなのかはともかく(多分アプリとサーバの仕様)、現時点(2021/02/08)では以下の方法でマイク入力をするしかないそう。
- スピーカーフォンで会話
- Bluetoothイヤホンで会話
- Lightning(USB-C)ケーブルのマイク付きイヤホンで会話
- Lightning(USB-C)→3.5ピンジャック変換コネクタでマイク付きイヤホンを繋いで会話
1, 2, 3は当然として4はiPhone7以降またはiPad Pro(2019)/Air(2020)以降の場合変換コネクタ等が必要になる。4は変換コネクタを使っているが、とどのつまり3.5ピンイヤホンジャックのマイク入力を使うのは問題ないことであり、先人たちはIK Multimedia – iRig2やTASCAM – iXZなど、イヤホンジャックから入力するタイプのオーディオインターフェースを使うのを推奨している。
…が、自分の手元にはそんなものはないのでゴリ押しでやることにする。
配線図
以下の図の通りに結線する。
要するに、唯一の入力であるマイクをミキサーを使ってどうにかする。ミキサーからの出力はステレオであるためモノラルに物理変換、その後4極→イヤホン/ヘッドホン分配コネクタのマイクに接続して音声を入力する。ヘッドホンはclubhouseで相手の声を聞く様として接続する。
必要な物
配線図の構成で必要な物をリストアップ。
4極コネクタ→マイク/ヘッドホン分配コネクタ
今回のセッティングで一番肝となる箇所。
iPhone/iPadはCTIA規格に準拠したイヤホンジャックを使っているので、その規格に準拠した分配コネクタを選ぶ必要がある。分配器を使うことにより、イヤホン(出力)とマイク(入力)の2系統に分ける事が出来るようになる。なお、イヤホン(出力)側にはclubhouseから流れるトーク参加者の声を聞く為、別途ヘッドホンまたはイヤホンを接続する。
コンパクトミキサー(3ch以上)
USB対応非対応は問わず、マイクとステレオの合計3系統以上=3ch以上が使えるミキサーで、先述したマイクが接続できる物であればなんでも良い。とりあえずよく分からないと言う人は今回検証でも使ったYAMAHA AG03を使えば万事OK。
マイク(コンデンサーマイク, ダイナミックマイクなど)
イヤホンについている付属マイクやiPhone/iPadに内蔵されているマイクよりは高品質なマイクを持っていて、ミキサーに接続できるタイプであれば良い。場合によっては、PC用ヘッドセットマイク(プラグインパワーマイク)がミキサーに接続できるのであれば、それでも可。
コンデンサーマイクやダイナミックマイクの違いについては以下を参照されたし。
Digiland – 島村楽器店のデジタル情報サイトより引用
RCA→ミニピンケーブル(オス→オス)
ミキサーからのMST(マスター)またはREC(録音)出力から伸ばすためのケーブル。場合によってはPHONE端子(Φ6.3mm)である必要場合があるので、そこはミキサーの仕様を確認しての対応となる。なお、RCA端子→PHONE端子の変換プラグは売っている。
ステレオ→モノラルスプリットケーブル(ステレオ→モノラル2系統変換)
ミキサーからの出力はステレオなので、信号をモノラルに変換する為だけのコネクタ。2系統になってしまうが使うのは1系統だけ、正確に言うと左(Left)チャンネルを使う。構成上なくても音は出るが、BGMの音が左チャンネルだけ入力されることになってしまう。音を均一にモノラルにする為に必要。
抵抗入りミニピン(AUX)ケーブル(オス→オス)
上記スプリットケーブルと下記の4極コネクタのマイク側と繋げるためのケーブル。モノラルであることが好ましいが、この場合ステレオでも問題はない。重要なのは「抵抗入り」であること。通常のミニピンAUX(ライン)ケーブルの場合、音量が大きすぎるので入力時に音割れ(クリップ)して、最悪iPhone/iPadとケーブル類の接続が頻繁に切れる。
ただ、これを導入すると音量がかなり小さくなるのでミキサー側でボリュームをかなり上げる必要がある。そりゃもう、かなり上げる。
BGMの再生プレーヤーなど
この場合別のスマホでも、携帯プレーヤーでも、CDデッキでもなんでも良い。
BGMを再生できるプレーヤーをミキサーに接続し、音を流し込めればOK。
必要に応じて:3.5mmミニプラグ延長コネクタ
ミキサーに接続したRCA→ミニピンケーブルから、モノラルスプリットケーブルへの接続端子がオス→オスで接続できない場合に使う。今回の検証では使っているので多分必要になると思う。そんなに高い代物でもないし、今後延長とかする場合には重宝するので家に1個あっても良い代物。
必要に応じて:Lightning or USB-C – 3.5mm ミニプラグ変換ケーブル
iPhone7以降、及びiPad Pro(2019)/Air(2020)の場合は別途変換コネクタが必要になる。公式で販売されている物は変換のみで同時充電が出来ないものになるので、充電をしながら使いたい場合は、Berkinの認証が取れた高い奴を買うか、動作保証が怪しい中華製の変換アダプタを購入することになる。
検証の実施
必要資材の調達と準備
上記の必要な物を自前で揃えた結果。
- clubhouseをインストールしたiPhone 6s Plus(イヤホンジャックがある)
- 適当なPC用ヘッドセット(プラグインパワーマイク)
- ヘッドセットが4極なのでここでも4極変換アダプタ
- YAMAHA AG03(ミキサー)
- Native Instruments Sprit Cable(モノラル変換用)x1
- RCA→ミニピンケーブル(オス→オス)x2
- 抵抗入りミニピンケーブル(オス→オス)x1
- 4極変換アダプタケーブル x1
- Androidスマホ(再生プレーヤー)
- イヤホン延長ケーブル(PCヘッドセットのマイク出力延長用)
上記の資材類を実際に接続した結果が以下の写真。
- ヘッドセットのマイク出力部分を延長してAG03に入力(ch:01)
- Androidスマホの出力をステレオでAG03に入力(ch:02,03)
- AG03のモニター出力をRCA→ピンジャック出力
- (3)をピンジャック延長コネクタを挟んでステレオ→モノラルスプリットに入力
- (4)の片側に抵抗入りミニピンケーブルを接続
- (5)のもう片方を4極→マイク/ヘッドホン分配コネクタの「マイク」に接続
- ヘッドセットのステレオ出力を4極→マイク/ヘッドホン分配コネクタの「ヘッドホン」に接続
これで配線図の通りの接続ができた。雑である。
音声テスト
マイク入力がしっかり入るかどうかの確認は、iOS/iPadOSにプリインストールされている『ボイスメモ』アプリで出来る。このアプリで入力の音量や音質をチェックし、適宜調整を行う。
本番の実施
音声テストで無事入力確認と音量調整が終わったら、clubhouseで早速やってみる。
- clubhouseでルームを作成(作るとしたら
Social
でやるのがオススメ) - ミキサーの音量を調整して適当に発声、またはプレーヤーを再生
- 発声と同時にアイコン周りが点滅すれば音声入力はされている
- 友人なりを招待して音を確認してもらい、微調整
ボイスメモアプリで確認をしていても、本番では「音量が大きい/小さい」「ノイズが多い」と個人差の意見が出てくると思う。迷惑が掛からない様に出来る限り調整を行い、快適な音量と音質を設定する。
感想
- 実際に流れている音量の確認ができない(当たり前)
- ミキサー側に別途ヘッドホン/イヤホンを接続しなきゃ確認不可
- イヤホンをしてヘッドホンを上から被ると言う荒技
- 入力音量が小さくて相手が「聞こえない」と発言
- ミキサーの出力は全開(MAX)にしないと無理
- マイク側も結構音量を上げる
- BGM側はそこまででもない
- 配線がめちゃくちゃ邪魔
総評
この構成でできる事は確認したが、配線具合から得られるメリットが小さい。
ミキサーが必要と言う時点で結構ハードルが高いし、ケーブル類も一般的に使わない様なケーブルを使う。更に言えば「たかだかマイク入力1系統の為にここまで頑張る必要性がどこにあるのか」と自問自答をすることになった。
もう一つ付け足すとしたら、最初に書いた通りclubhouseでDJ行為に近い事はダメなので、BGM代わりにSpotifyなんてやればもうアウト。ちゃんと包括契約された配信サービスでやってアーカイブのミュートorブロックを甘んじて受けよう。
と言うか、配線をしている時に以前にも似た様な検証をしていた事を思い出した。
高品質なマイクがあり、ミキサーもあり、諸々のケーブルも揃っていて、自身が著作を持って管理もしている楽曲群がある人は、とりあえずiRig2を買って接続すれば良いと思う。これだったら抵抗入りのミニピンケーブルとか不要で、インターフェース側で音量調整とモニタリングができる。PHONE変換端子が必要になるので注意が必要。
それでは、利用規約類を守って楽しいclubhouseライフを。